カルタづくりから学んだ、イギリスの価値観

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大沼未幸さん
上智大学外国語学部4年
イギリス・2011年9月参加


英語学科に所属している私は、外国と日本の言語や文化に興味があり、自国の文化を紹介すると同時にイギリスの文化も体験したいという思いから、この活動に参加することに決めました。カルタは子どものときによく遊んだことがあり、馴染みのある日本文化でしたが、自分で作るという経験はなく、しかもそれを外国で、英語で作るということだったので、成功するか不安な部分もありました。けれど、実際現地で子どもたちとカルタ遊びやカルタ作りをして、思っていた以上に学ぶことが多く、イギリスの子どもたちから気づかされることもたくさんありました。このレポートでは、イギリスと日本の違いということに観点を置いて、「読み句」「絵札」「ゲームに対する意識」の3つの項目に分けて、カルタ作りの経験を述べていこうと思います。


読み句を通じて感じる感性の違い

まず、読み句に関しては、日本語と英語の観念の違い、日本の子どもとイギリスの子どもの文章力の違いについて気づくことがありました。日本では、カルタの読み句は通常5・7・5のリズムに沿って作られています。日本人のなかに古くから受け継がれている、伝統的なリズム体系です。しかし、英語の場合はこのルールを当てはめるわけにはいきません。英語の詩で体系づけられていることは、脚韻を踏むこと、語数を揃えることなどです。これは古来のイギリスの絵本の文章などでも見られる特徴で、日本の5・7・5同様、古くから英語圏の子どもから大人まで親しまれているリズム感であると言えます。英語のカルタではこのルールを取り入れるのが良いと思われるのですが、子どもたちにも個人差があるので上手く脚韻を踏む文章が作れる子とそうでない子もいます。現地の先生のアドバイスを参考にすると、”like a song(歌のように)” “like a beat(拍子をつけて)” “lyric(歌詞のように)” “rhyming couplet(韻を踏んだ対句)”などという言葉を使って説明すると理解してもらえるということでした。日本の子どもたちが小学校で5・7・5の文章の作り方を学ぶように、イギリスでもこのカルタの読み句作りを通して、伝統的な英語のリズムを感じ取ってもらうことができたのではないかと思います。この特徴を踏まえて、日本の5・7・5からは、日本人のきっちりと枠に収まった形や秩序を大切にする性質が感じられ、言葉遊びのような脚韻を重視する英語からは、英語圏の人々の個人の発想力や想像力を大切にする性質が感じられ、興味深い発見となりました。そのような性質からか、イギリスの子どもたちは私が思っていたよりもずっとスムーズに、自由に文章を考えて完成させ、自分の文章に自信を持っている様子がうかがえました。想像力豊かな子どもたちの文章から、新しいものの見方を学ぶことができました。


絵札から感じる感覚の違い

絵札の作成を見ていても、イギリス人の子どもたちの想像力の豊かさを感じることができました。イギリスの小学校では日本の学年より年齢がひとつ下ということもあり、日本の6年生が描く絵よりは幼い印象を受けました。ひと目見て分かる違いとしては、イギリスの子どもたちは原色を多く使って、とてもカラフルな絵に仕上げているということです。日本では細かく描写して描くよう指導を受けた記憶がありますが、イギリスの子どもたちは対象の特徴を捉えて、アートに表現しているように感じました。これは、子どもたちが過ごしている環境に影響しているように思います。日本の小学校はたいてい、3、4階建てで窓際に一本廊下があり、廊下に沿って四角い教室が並んでいる作りになっています。机や椅子、ロッカーなどは木製、鉄製で、均一感が重視されているように感じます。一方イギリスの小学校は、必ずしも四角い教室ではなく、教室の位置する場所も一直線に並んでいるわけではありませんでした。真ん中に大きなホールがあるなど、子どもたちが集まるスペースを中心に作られている印象を受けました。学校のなかが広々していて、オープンで自由な気持ちにさせる空間だと感じました。特徴的だったのはその色遣いで、テーブルや椅子、給食の食器やスプーン、フォークにいたるまで、赤や黄色、青などとてもカラフルな色が使われていました。たくさんの色がある環境が、絵にも原色を多く使ったり、明るく個性的な色遣いをしたりするような感覚を育てるのに役立っているのではないかと思います。


カルタゲームから読み取る競争に対する意識

最後に、子どもたちがカルタで遊んでいる様子からは、日本人とイギリスの教育方法の違いを感じ取ることができました。イギリスの小学校では、褒められたり勝負に勝ったりするたびに、ポイントをもらったり、シールをもらったりして、子どもたち全員が意欲的になるようモチベーションをあげるようにしていました。カルタ大会で優勝したチーム、読み札、絵札で得票数を多く得た子に表彰を行い、表彰状と手作りのメダルを贈ると、とても喜んで、誇らしげにメダルを見せてくる子どももいました。他の子どもがそのようにメダルをもらっている様子をみても、文句を言ったり不平に思ったりする子どもはいませんでした。日本では、特に近年、子どもたちのあいだでの競争ごと自体をなくそうという動きがあると聞きました。運動会でのかけっこでも、ゴールまで走り切ることを重視して、特に順位をつけない小学校もあるようです。しかし、イギリスの子どもたちの様子を見て、個人差を大切にしたいからといってただ単純に勝負事をなくそうという考え方は、少し違うのではないかと思いました。イギリスの子どもたちは、勝負ごとがあるからこそ、ひとりひとりが向上心を持って努力し、良くできた子にはみんなで祝うという感覚があるように思えました。かといって、個性をつぶすわけではなく、むしろ日本よりもずっと、個性にあふれ、ひとりひとりが自分の作った物に自信をもっているような印象を受けました。

以上のように、イギリスでカルタ作りをすることによって、イギリス人の価値観を多く学ぶことができ、それと同時に自分たち日本人にある感覚や価値観、問題点を再認識することができました。イギリスの子どもたちも、この活動を通して日本文化や自分たちの町など、多くのことを学んでくれていたらいいと思います。