節分の紹介に挑戦

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山﨑 あさぎさん
社会人(郷土博物館学芸員)
イギリス・2011年2月


高校時代に進路を考えたとき、浮かんだ答えの中に「海外に日本文化を紹介できるようになりたい」というものがありました。そこで私は大学で日本民俗学を専攻し、今子ども達に日本の歴史に興味を持つきっかけ作りをする仕事に就いています。はたして高校時代に浮かべた進路のとおりになったのか。そんなことを考える時に「今の子ども達に紹介して、その子たちが海外に伝えてくれればいい」と言い訳を用意していました。そこに偶然見つけたこのインターン。高校時代の夢がふつふつとわきあがりました。英語に自信はありませんでしたし、仕事には無茶を言って休ませてもらいましたが、「日本文化を紹介したい」という気持ちだけを持ってインターンに参加しました。

日本で研修を受ける中で、私が普段教えている子どもは「日本文化の素養がある子達だな」と当たり前のことを再確認しました。折り紙1つにとっても、日本で考えれば、小学生はこれでは満足できないので、同じ年頃のイングランドの子は満足しないのではないかという内容でした。日本では小学生でももっと高度な折り紙を折れていますから、これでも難しいなんて想像できない。といった状況でした。

そして、日本について初めて知る子ども達に教えるには、私が学んできた事は高度でマニアックだという事も感じました。しかし、長年の夢がついにかなえられると考え、自分の意見を取り入れた授業案を作ることにました。日々の仕事にも近いものがありますし、自分を試してみたかったのです。実施させていただけることとなり、本当にありがたかったです。

その内容ですが、紙芝居のclassの際、「桃太郎」の紙芝居を読んだ後、鬼退治に絡めて日本の鬼の考え方を紹介し、そして日本の行事のひとつである、節分を紹介しました。節分は日本において現在でも多くの家で行われている行事です。私が学生時代、英語の授業中にクリスマスやハロウィン、イースターなどの行事について知ったように、イングランドの子ども達にも日本の行事を知ってほしい。その上で今でも行われている生の日本の文化を知ってほしいという気持ちから選びました。

授業では節分の説明に「現代では、鬼役の人は、鬼のお面をつけることもある」と絵を交えながら紹介し、その後の作業で桃太郎か鬼のお面を色塗りして仕上げる工作を入れました。桃太郎の紙芝居をした後なので、ヒーローである桃太郎が人気だろうと考えていたのですが、意外にも、鬼のお面のほうが瞬く間になくなっていきました。見渡すと、クラスの殆どが鬼のお面をチョイスしていました。「日本人にとって鬼は災いをもたらすものだ」と教えたために、作ったお面をかぶって日本人の私に怖がらせてくるような子もいました。ただふざけただけにも思えますが、意味をきちんとわかってくれていたのだと思うと嬉しい場面でした。

このような授業、日本の小学4年生にやらせたら、「幼稚園生じゃないのだから」といわれてしまいそうですが、イングランドの小学生達は本当に喜んで、楽しんでくれていました。紙芝居の話も、拙い私たちの英語をしっかり聞き取ってくれていたし、お面が完成し、シールを渡した後も目の部分をくりぬいたりと各自で工夫して楽しんでくれていました。

着物や食べ物、折り紙といった日本文化は見た目や味でもわかる素晴らしい文化です。その中で、日本の特有の生活として年中行事を紹介できたことは嬉しく思っています。

お面の材料に関してですが、お面用の厚紙やホチキス、輪ゴムは日本から持参しました。イングランドでも手に入るものではありますが、ホチキスはお面のために使うには少し大きく、輪ゴムも日本のような品質ではないと聞きました。自分の思ったとおりに授業を進めたいのならば持参する事が一番だと痛感しました。海外という日本ではない環境下で日本文化を紹介することは、日本で簡単に手に入るものが入りません。これから参加する方には、もし自分で授業を考えてみるようでしたら、自分の担当する事になった授業の内容を日本にいる間にもう一度見直して、グループなり、自分なりに組みなおしてみる事も大事かと思います。やはり準備が大事です。

日本、現地でそれぞれ研修をしても、学校に行って実際に授業をするまで、なかなかイメージがわきにくかったというのは事実です。1度授業を経験するまでは先行き見えずに、不安ばかりが募りました。ましてや子どもの前で授業などしたことのない学生さんたちが行うのですから、グループの子達は、私よりもきっと心配だったのだろうと思います。できることは日本にいる間にやっておく、現地に入ったらそれをより良くする。それが大事だと思います。それでも私たちの英語ではやはり伝わりにくい、私たちのやりたい内容の授業をnativeの子どもたちにわかりやすいように作り直してくださった現地の先生、kevinに感謝したいです。おかげで、子ども達が私たちの英語で理解してくれていることが感じられました。

今回、私は用意された授業を自分なりにアレンジして、イングランドの子ども達の前で授業をさせてもらいましたが、授業を作るにあたり考えていた事が2つあります。

1つは与えられた時間を有効に活用し、子どもを飽きさせないようにするということです。紙芝居の授業も、読むだけでは10分程度で終ってしまうので、そこからお話に絡めて作業を行うという流れにいたしました。飽きてしまってはつまらないという印象をもたれてしまうので、作業の遅い子がいることを考慮しつつ、早く終ってしまった子にも追加で何かできる作業を用意する事が大事でした。その点で工夫の余地があったお面は、偶然ですが良い選択肢でした。

そして2つめは「何が日本文化なのか?」「この紹介で間違っていないのか」という事をずっと悩んでいました。
例えば折り紙。かぶとを折るのと違い、折り紙で犬や猫を作ることだけで本当に良いのだろうか。それではただの工作にしか過ぎないのではないか?成果物で何か日本文化の背景を伝えられるものにしたほうが、日本文化紹介になるのではないだろうかと疑問に思っていました。それが折り紙に不慣れな子ども達には高度すぎるという事なのかもしれませんが、もっと良い方法があるのではないかと頭がいっぱいになりました。
そして茶道や書道は、動作の面白さだけ、美味しさだけで日本文化紹介としてよいのだろうかという事も感じていました。精神を集中させる事とか、相手を思いやる心なども、茶道や書道の根幹ですが、詳しくやると難しく、子どもに伝わらない。略式で進めては、本当にこれで日本文化紹介になるのか?間違ったことを教えてしまっていることにはならないだろうかとずっと悩んでいました。特に茶道に関しては紅茶文化のあるイングランドですから、そこと対比しながら紹介できればよかったのではないかと思いました。
また、中国から来たものが、日本で独自に花開いた文化を紹介しているものが多く、本当に「日本」と言ってよいのだろうかと悩む場面も多くありました。その中で年中行事は、本当に特有のものであるため、これを基礎に授業を進めるとよりよいのではないかと感じています。

授業以外で日本文化紹介をしたときのことも紹介します。イングランドに日本のものはだいぶ来ていると感じました。Made in JAPANは良く見かけました。ホームステイ先のテレビは日本製でしたし、ポケモンやハローキティなどのキャラクター、テレビゲームなど日本のものがこんなに海外に出回っているとは改めて実感することができました。子ども達は日本の場所は知らなくても日本のアニメは良く知っていました。「それも日本の会社なの?」と驚かれる場面もありました。それだけ生活に溶け込んでいるのだろうと感じがしました。

また、Karaokeがこんなに広まっているとは思いませんでした。「カラオケ」と言って通じないなんて(聞こえてくる音はカリオケ)、どれだけ世界に認知されているのだろうと驚いたとともに、きっと人気のイベントなのでしょう、Pubでカラオケナイトが毎週のように行われていました。日本とは少し違い、カラオケボックスではなく、DJの人がいたり、歌詞以外の映像が出てこなかったりという違いがあるのが面白くて、そういう部分を見つけるとわくわくしました。日本に外国人の人が来たときに紹介したら面白いかもしれないと思うようになりました。ホストマザーとファザーに、「カラオケは日本発祥なんだ」と伝え、日本とイングランドのカラオケ事情について話したりしました。歌う人ばかり楽しくて、聞いている人はそんなにと言うのはどこも同じようでした。

スーパーで見つけたカブトヌードル(独自のカップラーメン)や、テレビを見ていたら、日本でも放映されているロゼッタストーン(外国語習得ソフト)のCMが、イングランド版は日本語を覚えるようになっていたりと生活の中の小さな違いに気付ける事が本当に面白かったです。
その中で、イングランドは古いものを大事にしているという事、シンプルに生きているということ、日本のようには便利さを追求しているとは感じませんでした。私のホームステイ先はお風呂はシャワーなしのお湯と水の蛇口が別のものでしたし、トイレットペーパーホルダーも簡易なものだけ。日本だったら細かいところまでこだわりそうなところを不便な部分もそのまま受け入れているように感じました。例えばカラオケに関しても、日本では映像付きが多いですが、技術としてはすごくても、映像が付いている意味は特にないと考えれば、シンプルなのも良いのかもしれないと感じました。そうやってイングランドの生活を知りながら、日本の良いところを見直す良いきっかけになったと感じています。

高校時代に考えていた日本文化を海外に紹介すること。思わぬタイミングでしたが、このような機会に参加し、実現できたこと本当に嬉しく思っています。今回で少しだけですが自信がついたので、草の根的活動にはなりますが、もっと詳細に日本文化を紹介できるようになっていければ良いなと思っております。