日本とイギリスの文化


池島瑞紀 さん
法政大学法学部2年
イギリス・2012年2月参加


本格的に英語教員を目指している学生が多い中、私は特に将来的に英語を極めたいわけでもなく今回のインターン参加を決めました。そのため英語の能力的な面で、授業の実施には班員にたくさん助けてもらいました。協力なしでは生活すらできなったのではないかと思っています。

私の今回の旅の目的は、端的に言って「英語圏に行くこと」でした。成立した歴史が古く、戦勝の歴史をもつ文明都市を見てみたいという好奇心です。実際に目の当たりにして、予想以上の情報を得られました。日本にいて、理解はしていたものの自覚をしていなかったと今回のインターンで判明したことが数点あります。

ひとつは何と言っても、自分が国家に守られている存在であるということです。純粋な英語圏では、ほかのヨーロッパに比べて、英語が話せないことに対する風当たりが強いであろうことは予想のうちでしたが、実際に体感してみるのとはまた、別ものでした。言葉だけでなく、所作や常識や価値観がまったくもって異なるのです。現状、そんなことは起きないでしょうが、たとえば日本という国が突然なくなったとしたら、身一つで異国に生きることは可能なのかと考えてしまいました。こんなことは中国やタイに過去行った時は感じなかったので自分でも驚きました。イギリスに対しては、自国が文化的に劣勢という自覚があるからこう思うのではないかと思います。文化という国のアイデンティティーは言語にあるという話を聞いたことがあります。ヨーロッパ世界が文化の共有をしているのを目の当たりにして、世界がマイノリティー文化の集まりだといういままでの認識が覆されたのです。地理的距離の近さは文化理解度に比例します。和辻哲郎の「風土」のように、同じ対外環境をもつ地域に暮らす人々の生活は当然似通っています。日本は価値観の合致という点において、他ヨーロッパ諸国とはスタート地点がずいぶん後方にあるということではないでしょうか。国際社会でアメリカに追随し、同調主義であるように思われるのも、強大な他文化圏の欧米と歩調を合わせるにはやむを得ない歴史的外交方法だったのではないかと思われます。しかし、アジア圏がメイン市場となっているいまもその考えに捕らわれていてはしょうもないことでしょう。アジアの中での日本の立ち位置をいまいちど考える必要があると思いました。さらに、相対的に国内を見つめなおすきっかけとなり、海を渡れば通用しない価値観を持つ1億3000万人に構成された日本の文化を、非常に面白く思いました。

つぎに思ったことは、日本の英語教育の杜撰さです。何年も前から叫ばれていることであり、課題となっていることは理解していました。しかし今の教育方法では本場で使える英語の習得には程遠いといえ、生きた英語の習得を「永遠の」課題にしている現状の教育に不満です。中学や高校で使われている教科書は、日本語に合わせて英語を置いていっている会話の印象が拭えません。英語を日本語で学ぶ教育を改め、海外で使える表現といった実用的な内容にしなくては時間がもったいないです。幼いころから英語教育に力を入れると、日本語独特の細かいニュアンス表現が失われていくということもわかっているようなので、個人的願望としては「受験英語」でいいのではないかとも思っています。しかし、グローバル社会に伴ってそんなことを言っていられないのも事実です。今回のインターンには、英語教員を目指す私なんかよりも志の高い優秀な参加者がたくさんいました。私が教育を考えるまでもなく、参加者に、将来の子供たちが受ける英語教育に、期待することにします。

最後に、思ったことです。ロンドンから2時間ほど東に行った港町だからでしょうか、特に最終のよく晴れた日曜日、町の人がこぞって浜辺で海水浴を楽しんでいる姿が印象に残りました。海辺の飲食店のテラスはどこも埋まっており、町の人が全員出てきたのではないかと思うほどの人の集まりようだったのです。そこが単に田舎だったのかもしれませんが、ひとつの休日を満喫しきる晴耕雨読のスタンスに感心してしまいました。

勤務態度がやたらいいといわれる日本のサービス業ですが、たしかに他に類を見ない完成度であることは自負していいと思います。海外の従業員は、日本に比べたらあらゆるところで雑です。余談ですがロンドンで入った個人経営の飲食店で、テレビに夢中で店長が呼んでも出てきてくれなかったことには驚きました。日本では昔から「滅私奉公」という言葉通り、きりきり働くことが美徳とされてきました。しかし美徳とはいえ、ワーカーホリックと欧米人に揶揄された日本人の献身的すぎる勤務態度は、生きるために働いているのではなく働くために生きているのではないかとさえ思えます。ましてやそれで心を病んでいたら本末転倒ではないかと思うほどです。ブータンのように、とまでは国際社会における立ち位置が違うから難しいとしても、幸福度が世界178か国中90位というのはいかがなものでしょうか。ちなみにイギリスは41位、アメリカは23位です。世界情勢が閉塞感に包まれている今、現先進国として似たような結果が出ると思っていたのですが、そうでもありませんでした。どうやら先進国でも心に余裕を持つことは可能なようです。そして一概にとは言えませんが、ライフワークとしての労働がこの調査の日本とイギリスの、数字の差のように思われました。

以上で、外から見た日本の再発見です。イギリスへのインターンは、総括して、とても楽しい経験になったことは言うまでもありません。