コミュニティインターンシップで学んだこと

1202yuki

大澤優貴さん
東京工業大学大学院理工学研究科修士1年
イギリス・2012年2月参加


私はこのコミュニティインターンシップの主な目標として以下の3つを挙げた.
・未知の問題を解決し臨機応変に対応する力を養う.
・コミュニケーション能力の向上を図る.
・自分の能力を発見する.

以下では,このプログラム中に学び感じ取ったことを述べるとともに,これらの目標が如何に達成されたかを記す.


1.学校による違い
Christ Church Junior School と St. Peter in Thanet Junior School という2つの学校を訪問したが,どちらの学校の児童も非常に真面目だと感じた.先生やインターンの話を真剣に聞き,過度に騒がしくなることもほとんどない.近くの人と関係ない話をしだす児童が目立つ日本の小学校とは異なっていた.ただ,2つ目に訪問した St. Peter in Thanet Junior School では先生方が厳しく,常に静かな雰囲気を出すような指導が行われていたので,Christ Church Junior School の児童に比べて自由な感情表現が制限されているように感じた.2校しか訪問していないため正確なことはいえないが,おおよそ同じ地域にある公立学校でも学校によって大分雰囲気が違うことがうかがえた.


2.日本文化紹介
主に日本文化として取り上げたカルタ,折り紙,書道,日本の歌の4つについて学んだことを述べる.

(1)カルタ(郷土カルタ作り・ゲーム)
子どもたちはカルタという言葉をほとんど聞いたことがない.そのため,カルタがカードゲームであることや,昔はカードの代わりに貝殻を使っていたことなどを紙芝居サイズのパネルで説明したことは大きな意味を持った.カルタのルールは一見複雑だが,整理すると大きく4つにまとめられるということに気付き,それを絵も用いながら板書するという工夫をしたところ,子どもたちはすぐにルールを理解しゲームに熱中していった.

ルール説明に限らず伝達事項は数多くあるがその中でどれを強調するかは重要だ.実際にデモンストレーションをしながら詳しいルールを説明する際にも,より明解な英語で伝えるように意識した. 現地の小学校では我々にはあまり馴染みのない電子黒板が使われていたが,それを上手く活用することにも成功した.さらに取った札を入れる箱を折り紙で作るなど,アイディアを色々出し,創意工夫に富んだカルタ紹介が出来た.様々な工夫や対応を行う中で,自分の中に潜んでいた発想力に久しぶりに気付けたと思う.

カルタ作りに関しては内容が複雑でアクシデントが起こることが予想された.児童にカルタのトピックとして取り上げたいものを挙げてもらう→各児童にアルファベットを割り当て読み句を完成させる→読み句をパソコンで打ち,読み札を完成させる→絵札を完成させるという流れだが,各工程の準備や仕上げが非常に大変だ.絵札に描く絵のモデルとなる写真を撮らなければならないし,トピックに偏りがないように質問も工夫しなければならない.児童の数によってアルファベットの数を調整する必要もある.また子どもたちが書いた英語は大変読みにくいため先生の手助けが必要だ.絵を描くときに絵の具などの道具が十分用意されていない場合もある.札を丈夫にするためラミネートもしなければならない.早く作業が終わってしまった児童への対応も考える必要がある.しかし,各テーブルに1~2人のインターンが付き,それぞれが臨機応変に対応して指導した結果,全体としてとてもスムーズに授業を行うことが出来た.また,多くの児童に作品などについて質問するのを通して,コミュニケーションの取り方を学ぶことが出来たと思う.また,授業時間外の準備や仕上げもチームのメンバーで上手く役割分担をし,効率的に行えた.子どもたちは楽しそうにカルタを作っており,私も教えるのが楽しいと心から感じられて本当によかったと思う.

カルタ作りは2日間に渡って行ったが,1日目に欠席した児童がおり,私は急きょその児童を担当することになった.1日目の内容をどうやってまとめて教えるか,そして他の児童に追いつけるか,その場で考え実行した.その児童はすぐに他の児童に追いつき,無事カルタを作り上げることが出来た.未知の問題を解決し,臨機応変に対応する力はこの場面でかなり養われただろう.これはマニュアルに書かれたことをやったり,与えられた問題を解いたりしているだけでは絶対に身に付かない力だ.自ら積極的に伝えたいという気持ちがあり,かつ自分の担当する部分だけでなく授業の全体像を把握していたからこそ,半分の時間で児童にカルタを伝えることが出来たのだと思う.臨機応変な対応は主体的な活動意欲と全体像の把握があってこそできるということを改めて実感した.

最後のカルタ大会はクラス対抗で行った.対戦方法や得点の付け方,司会の説明などを工夫したほか,日本の音楽をBGMとして流したところ,独特の雰囲気が出て大変盛り上がった.また,札をとる時やゲームが1セット終わった時に子どもたちは絵札を次々と見て「あ,○○だ!」などと会話を交わしていた.子どもたちにRamsgateという町の魅力を再発見してもらうことができたといえるだろう.それと同時に我々も町の様々な魅力を知ることが出来たことを大変嬉しく思う.


(2)折り紙
折り目を付けなかったり角を合わせなかったりする児童も多く,個別の対応に追われた.前での説明を工夫してもう少し皆で一緒に進められたらよかったのではないかと反省している.また,自分で手を動かそうとせずすぐにインターンを呼んで折ってもらう児童も何人かいた.各テーブルを回って指導するとき,どこまで手助けするかをよく考え,児童の能力や手順の難しさなどに応じてできるだけ子どもたちが「出来た!」と思える瞬間を作るように心がけた.一人ひとりの状況により指導内容が大分異なってくるのでここでも臨機応変に対応する力がかなり養われたと思う.また,1対1で児童と話すことが多かったので,英語でのコミュニケーション能力がとても高められた.


(3)書道
1回だけ書道を紹介する授業を行った.自分の名前を日本語で書くのが子どもたちに好評であることが予想されたため,通常の書道をやった後,大きな折り紙でかぶとを作り,そこにも筆で名前をカタカナで書いてもらったところ大成功だった.書道は汚れやすく,筆の置き場所など苦労する点も多かったが,事前に準備をしてあったためスムーズに授業を行うことが出来た.臨機応変な対応はもちろん大切だが,万全の準備をするという基本的なことも忘れてはならない.事前準備の大切さを改めて実感した.


(4)日本の歌
フェアトレードパーティーで「ふるさと」と「世界に一つだけの花」,St. Peter in Thanet Junior School の朝礼で「ふるさと」と「さんぽ」をそれぞれ披露した.披露する歌についてメンバーから色々なアイディアが出て大変勉強になった.振り付けも分かりやすいように工夫してつけたところ,聞いている人を楽しませることが出来たと思う.特に小学校でやった「さんぽ」では,多くの児童が振り付けを一緒にやってくれたので雰囲気が伝わり大変よかった.1番を日本語で2番を英語で歌ったのも効果的だったと感じている.インターンも心から楽しんで歌い,踊っていたように思う.

また,授業の中で時間を余らせて「うみ」(うみはひろいな~)を児童に日本語で歌ってもらうことも試みた.実は,私は前から外国の子どもたちに日本の歌を覚えて歌ってもらうことを夢見ていた.今回はオプションとして行ったため時間や教材などに制限があったが,その中でもチームのメンバーが協力し合ってなんとか子どもたちだけで歌うことが出来た.子どもたちの声量がとても小さかったので大成功だったとはいえないが,私がアラビア語や中国語の歌を1つも歌えないことを考えると,イギリスの子どもたちに短時間で日本の歌を歌えるようになってもらったというのは大きな成果といえるだろう.折り紙や書道が視覚に訴えるのに対し,歌は聴覚に訴える.耳でも日本を感じ取り,頭のどこかに記憶してもらうことが出来たはずだ.このように,これまでとは違った側面からアプローチすることは普段の生活や研究にも活かすべきだと思う.


3.参加した意義
これまでに述べた通り,体験前に立てた3つの目標は達成されたといえるだろう.未知の問題を解決し,臨機応変に対応する力を養うのに海外体験学習(特に専門分野外)は極めて効果的であることが肌で実感できた.机上の学習だけでは絶対に身に付けられないコミュニケーション能力が向上したのは言うまでもない.自分がかつてよく発揮していた能力も海外の小学校という場でよみがえった.

私の専門は数学で,このプログラムと直接の関係はない.だからこそ,参加したことによって普段とはまったく異なる世界が見え,様々なことが刺激的に感じられたのだと思う.自分の専門の世界だけでなく,その外の世界も知り,多角的な視野を持って勉強や研究を進めるべきだ.今回の経験は新しいアイディアを生み出す大きな支えとなると思う.また,一人で進めていくことの多い数学の勉強・研究とは違い,このプログラムでは様々な人と協力して授業を作り上げていった.そして現地の人も含め非常に多くの人と交流した.将来世界で活躍することを念頭に置いたとき,海外で積極的にコミュニケーションをとる活動を学生のうちに経験することは大変重要であると思う.その意味で今回の参加は非常に有意義なものだった.

この体験を通して,以前より主体的に行動するようになったと感じている.まったく知らない機関に連絡をとったり,移動方法(交通手段等)を調べたり聞いたりすることをここまで積極的にやったのは今回の体験が初めてだったが,イギリスの人々はとても優しく,こちらが意思表示をすれば親切に様々なことを教えてくれた.これは現地に行ってコミュニケーションをとったから分かったことである.今回の体験で得た解決力,対応力,コミュニケーション力,発見した自分の能力をもとに,今後も様々なことにチャレンジしていきたい.