文化交流の理論と実践を通して学んだこと

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岩井理江さん
同志社大学法学部
イギリス・2013年2月参加


みなさんは「文化交流」というキーワードからどんなことを連想しますか。異なる文化集団が互いを知るための友好親善、華やかで楽しいイメージを抱くでしょうか。それとも異なる文化集団が互いに反感や嫌悪感を持つ、暗いイメージを抱くでしょうか。おそらく、多くの人が文化交流と聞けば、前者のようなイメージを持つのではないかと思います。私自身も、いつからとなくそんなイメージを抱いていました。また留学生との交流等、自分の体験からもそう思うことができました。しかし私は、文化交流が必ずしも異なる文化集団の双方にとって、プラスの働きをするものではないことも専攻の国際政治学を通して学びました。

文化交流の定義は非常に広いですが、一般的には【異なる文化集団が意識的に(ある目的を持って)文化を交流し合うこと】を指すことが多いようです。それには政府が主体となって行うものもあれば、NPOなど民間の組織が行うものもあります。今回のコミュニティ・インターンは、この定義に基づく文化交流であったと認識しています。文化「交流」ではなく、文化「紹介」であったということもできるかもしれませんが、私自身はできるだけ、一方的な「紹介」ではなく、「交流」になるように努めました。

話を元に戻しますが、「文化交流の結果として当事者間に信頼や友好を築くことができるのか」というのが私の問題意識でした。そして2週間、イギリスの学校で日本文化を伝え終え、感じた答えはYESです。もちろん、宗教的・政治的に全く相容れない文化を持つ者同士、歴史的に対立し続けてきた者同士であることは、文化交流がプラス要素として働く可能性を低くするかもしれません。日本とイギリスがそのような関係にないことも明らかです。しかしそうしたことを考慮に入れても、文化交流が当事者双方にとって、良い影響を与える得るものであると、一般化して言えるのではないかということを感じたのです。その成功のヒントは、先にも触れたように自国の文化を一方的に紹介するのではなく、自分たちも相手国の文化を知ろうとすること、【双方向的な交流】にあると感じます。

その例として良いと思った活動が「カルタ」です。カルタ自体は日本の文化ですが、今回の活動で用いたカルタは「My Thanet Karuta」―イギリスで初めて創られた郷土カルタ―です。「郷土カルタ」は、すべての読み句がその地域のことに関する句になっています。つまり、「My Thanet Karuta」は、訪問先であるサネット地域専用カルタです。子供たちはいったん遊び方を覚えると、とても楽しそうに取り組んでくれました。「この遊び最高だよ!」、「もう一回やりたい!」、「Karuta!」という元気な声が聞こえてきました。地域で開催したカルタ大会では、絵札にアルファベットが記載されていないカードを使うことになり、読み札の内容と絵を必死に暗記しようとする子供たちの姿があちこちで見られました。そしていつになく、真剣にゲームに臨んでくれました。

帰国後私は、なぜ、これほどまでに子供たちがカルタに夢中になってくれたのかということを考えてみました。そしてその答えとして、「My Thanet Karuta」に【双方向的な交流】があるからだと考えたのです。これはフロムジャパンが長い月日をかけて現地の人と協力して作ったもので、私たち第6回インターンが直接制作に携わったわけではありません。しかし、その制作の過程にはフロムジャパンとサネットの双方向的な交流がたくさん詰まっていたと思います。カルタの題材を選ぶために地域を歩き回り、現地の人からサネットについて教えて頂くなど、イギリスの小さな街に日本人が密着することで最終的にこのカルタが完成したのです。またカルタ遊びをするなかで、私たちもサネットについて学ぶことができます。時には子供たちから、題材となった場所の話を聞けます。さらに私たちは、題材場所をいくつか訪れ、実際にサネットの街の雰囲気を感じることもしました。
このように、郷土カルタを通じた活動は、単に日本文化だけを紹介しようとするものではなく、「私たちがサネットから学ぶ」機会を含むものです。そのため、お互いがお互いを知ることができ、交流が生まれます。自分たちの文化を相対化して見ることができます。帰国して思うのは、もっと積極的にサネット地域について勉強すればよかったな、日本文化を伝えるだけでなく、子供たちともっとサネットの話をする時間をとりたかったなということです。活動中は、自分たちのプレゼンや教えることで精いっぱいで、なかなかできなかったというのが正直なところです。しかしその中でも私は、生活の中で日本との違いを見つけそれを受け入れたり、現地の人と話をし、イギリスとサネットについて学ぶ努力をしました。そうすることが、日本文化を伝える際にも必ず役立つと思うのです。

また先にも述べたように、カルタの制作には地域のこどもからお年寄りまで様々な年代の人が関わっていました。そのため、採用された読み句と絵札の制作者を表彰する式では、地域が一体となってカルタの完成を喜びました。その時、この活動は文化交流という域を超えてサネット地域の「まちづくり」にも貢献しているということを学びました。たとえ異なる文化を持つ集団であっても(だからこそ)、もう一方の文化集団に対して文化的・社会的な貢献ができるということ実感したのです。

実は国際政治学において、文化交流が一方通行的ではなく【双方向】的に行われるべきだという議論があります。日本政府のもとで行われてきた文化交流は、長い間自国の文化を一方的に紹介しようとするものでした。近年、双方向的な活動を重視しようとする声もありますが、実態としてはまだまだです。そのため、フロムジャパンが提供するこのプログラムは非常に興味深いものだと感じました。このプログラムに関心を持つ人は、教育学部の人が多いかもしれませんが、文化交流という視点からも楽しむことができるプログラムです。私は文化交流が国際関係にプラスの影響を与えることを実感し、そのより効果的な方法についても見つけることができました。気になった人は是非参加してみてください。